来ずやあらん来やせんとのみ河岸の
まつの心を思ひやらなん
- 歌の意味
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来ないのだろうか、来るのだろうかとばかり思って、川岸の松のように待ち続けている私の心を、思いやってほしい。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 938
詞書「男の、いかにぞ、え詣で来ぬこと、と言ひて侍りければ」
来ないのか来るのかとばかり思って、川岸の松のように待つ私の心を思いやってほしい、と詠んだ歌である。来るか来ないかと気をもみながら待ち続ける心を、川岸に立つ松に託して訴えている。
詞書によれば、男が「どうしていますか、行けなくて」と言ってよこしたので答えた歌である。行けないという男に、待ち続ける側の心を思いやってほしいと求めている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「来ずやあらん」は、来ないのだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞である。六音の字余りとなっている。
二句「来やせんとのみ」は、来るのだろうかとばかり、の意で、初句と対になり、揺れ動く心を表している。
三句「河岸の」は、川岸の、の意で、四句の「まつ」を導いている。
四句「まつの心を」は、待つ私の心を、の意で、「まつ」に川岸の「松」と「待つ」を掛けている。
結句「思ひやらなん」は、思いやってほしい、の意で、「なん」は他に対する願望を表す終助詞「なむ」である。
まつ:川岸の「松」と、「待つ」を掛ける
おもひやる:相手の身になって思う、思いやる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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いなせとも言ひ放たれず憂きものは 身を心ともせぬ世なりけり
- 次の歌
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強ひて行く駒の足折る橋をだに などわが宿に渡さざりけん