常よりもまどふまどふぞ帰りつる
逢ふ道もなき宿に行きつつ
- 歌の意味
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いつもよりも、迷いに迷いながら帰ってきたことだ。逢う道もない家に行っては。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 975
詞書「女のもとにまかりたるに、立ちながら返したれば、道よりつかはしける」
いつもよりも迷いに迷いながら帰ってきた、逢う道もない家に行っては、と詠んだ歌である。家の中に入れてもらえず立ったまま帰された悔しさと落胆を、帰り道に迷うほど心が乱れたことで表している。
詞書によれば、女のもとへ行ったが立ったまま帰されたので、帰り道から送った歌である。初句の「常よりも」は本巻の第九百十三首と同じで、第九百十三首が初めて逢った朝の別れのつらさを詠むのに対し、本歌は逢えずに帰るつらさを詠んでおり、対照をなしている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「常よりも」は、いつもよりも、の意で、本巻の第九百十三首と同じ初句である。
二句「まどふまどふぞ」は、迷いに迷いながら、の意で、同じ語を重ねて心の乱れを強めている。「ぞ」は強めの係助詞である。
三句「帰りつる」は、帰ってきたことだ、の意で、二句の「ぞ」を受けて連体形で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなり、以下と倒置になっている。
四句「逢ふ道もなき」は、逢う手立てもない、の意で、帰る「道」に逢う手段の意を重ねている。
結句「宿に行きつつ」は、家に行っては、の意で、「つつ」は動作の反復を表す接続助詞である。
まどふ:道に迷う、心が乱れる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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露ばかり濡るらん袖の乾かぬは 君がおもひのほどや少なき
- 次の歌
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濡れつつもくると見えしは夏引きの 手引きに絶えぬ糸にやありけん