水まさる心地のみしてわがために
うれしき瀬をば見せじとやする
- 歌の意味
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川の水かさが増すような心地ばかりがして、あなたは私のためには、うれしい逢瀬を見せまいとしているのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十三 恋歌五 993
詞書「又、男」
川の水かさが増す心地ばかりして、私のためにはうれしい瀬を見せまいとするのだろうか、と詠んだ歌である。前歌の河を受け、水かさが増して渡れる瀬が見えないことに、逢瀬を許してくれない相手のつれなさを重ねている。
詞書によれば、前歌を受けて、男がまた送った歌で、第九百八十九首からの五首の贈答を結んでいる。恋歌五の巻末歌で、巻頭の第八百九十一首が伊勢の海の海松布に寄せて逢う機会を求めたのに対し、本歌は川の瀬に寄せて逢瀬を求めており、海と川の水辺の景物で巻の初めと終わりが呼応している。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「水まさる」は、水かさが増す、の意で、前歌の「いやまさり」を受けている。
二句「心地のみして」は、心地ばかりがして、の意で、涙で水かさが増す思いを含ませている。
三句「わがために」は、私のためには、の意である。
四句「うれしき瀬をば」は、うれしい瀬を、の意で、「瀬」に浅瀬と逢う機会の意を重ねている。前歌の「河」を受けている。
結句「見せじとやする」は、見せまいとするのだろうか、の意で、「じ」は打消しの意志、「や」は疑問の係助詞で、連体形「する」で結ぶ係り結びとなっている。巻頭の第八百九十一首が逢う機会を求めて結んだのと同じく、逢瀬を求める思いで巻を閉じている。
みづまさる:川の水かさが増す
せ:川の浅い所。逢う機会を重ねる
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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河とのみ渡るを見るに慰まで 苦しきことぞいやまさりなる
- 次の歌
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逢ふ事をよどに有りてふみつのもり つらしと君を見つるころかな