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いにしへの心はなくや成りにけん
頼めしことの絶えて年ふる

歌の意味
昔のあなたの心はなくなってしまったのだろうか。頼みにさせたあの約束が絶えたまま、年月が過ぎていく。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1003

詞書「男の久しう訪れざりければ」
 昔の心はなくなってしまったのだろうか、頼みにさせた約束が絶えて年が経つ、と詠んだ歌である。かつて約束を交わした頃の相手の誠意が失われたのではないかと、長い途絶えを嘆いている。
 詞書によれば、男が久しく訪れなかったので送った歌で、次歌の第千四首に男の返しが置かれている。前の贈答の「頼め」「絶え」を受け継ぎ、途絶えが歳月にまで延びた形となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「いにしへの」は、昔の、の意で、次歌の初句「いにしへも」と対応している。
 二句「心はなくや」は、心はなくなって、の意で、「や」は疑問の係助詞である。
 三句「成りにけん」は、なってしまったのだろうか、の意で、二句の「や」を受けて連体形「けん」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
 四句「頼めしことの」は、頼みにさせた約束が、の意で、前歌の第千二首の「頼めくる」と同じく下二段の「頼む」を用いている。
 結句「絶えて年ふる」は、絶えたまま年月が過ぎる、の意で、次歌の結句「年をのみふる」がこれを受けている。

いにしへ:過ぎ去った昔
ふ:年月が経つ
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
玉鬘頼めくる日の数はあれど 絶え絶えにてはかひなかりけり
次の歌
いにしへも今も心のなければぞ うきをも知らで年をのみふる