狩人の尋ぬる鹿はいなび野に
逢はでのみこそあらまほしけれ
- 歌の意味
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狩人が探し求める鹿は、いなび野で拒むように、狩人に出会わずにばかりいたいものだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1009
詞書「女の外に侍りけるを、そこにと教ふる人も侍らざりければ、心づから訪らひて侍りける返事につかはしける」
狩人が尋ね求める鹿は、いなび野にいて逢わずにばかりいたいものだ、と詠んだ歌である。自分を狩人に追われる鹿にたとえ、「いなび」に拒む意を響かせて、尋ねてきた相手に逢いたくないと告げている。
詞書によれば、女がよそに移っていたのを、居所を教える人もいなかったのに、相手が自分から捜し当てて便りをよこした、その返事として送った歌である。本巻の第千五十六首、第千五十七首も妻を求める鹿を詠んでおり、鹿に寄せた恋の歌が巻の後半にも置かれている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
なお本文の三句は「いなひのに」とあり、読み仮名の行の「いなみのに」と一致しない。ここでは本文の表記に従う。
初句「狩人の」は、獣を狩る人の、の意で、言い寄る男をたとえている。
二句「尋ぬる鹿は」は、探し求める鹿は、の意で、女自身をたとえている。
三句「いなび野に」は、播磨国の印南野で、の意で、「いなび」に地名と、拒む意の「否ぶ」を掛けている。
四句「逢はでのみこそ」は、逢わずにばかり、の意で、「で」は打消しの接続助詞、「こそ」は強めの係助詞である。
結句「あらまほしけれ」は、いたいものだ、の意で、「まほし」は願望の助動詞で、四句の「こそ」を受けて已然形「まほしけれ」で結ぶ係り結びとなっている。
いなび:播磨国の地名の印南野と、拒む意の「否ぶ」を掛ける
とぶらふ:訪ねる、便りをして見舞う
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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露の命いつとも知らぬ世の中に などかつらしと思ひおかるる
- 次の歌
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小山田の水ならなくにかくばかり 流れそめては絶えんものかは