古典和歌stream

ちはやぶる神にもあらぬわが仲の
雲居はるかになりもゆくかな

歌の意味
神であるわけでもない私たちの仲が、神の住む雲の上のように、はるかに遠く隔たっていくことだ。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1025

詞書「女の男を厭ひて、さすがにいかがおぼえけん、言へりける」
 神でもない私たちの仲が、雲の上のようにはるかに隔たっていくことだ、と詠んだ歌である。神が雲の上の遠い存在であるように、人である二人の仲までもが遠く離れていくことを嘆いている。
 詞書によれば、女が男を嫌いながらも、さすがにどう思ったのか、言い送った歌で、次歌の第千二十六首に男の返しが置かれている。本巻の第九百九十八首も「雲居」によって遠く隔たった相手を詠んでいる。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「ちはやぶる」は、「神」にかかる枕詞である。次歌の初句も同じ枕詞で始まっている。
 二句「神にもあらぬ」は、神でもない、の意で、雲の上に住む神と人である二人とを対比させている。
 三句「わが仲の」は、私たちの仲が、の意である。
 四句「雲居はるかに」は、雲の上のようにはるかに、の意で、神の住む天上の遠さに二人の隔たりを重ねている。次歌の四句「おのれ雲居に」がこれを受けている。
 結句「なりもゆくかな」は、なっていくことだ、の意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。本巻の第千四十首の二句「なりもゆくかな」と同じ句である。

くもゐ:雲のある所、空。遠く隔たった所のたとえ
いとふ:嫌って避ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
菅原や伏見の里の荒れしより 通ひし人の跡も絶えにき
次の歌
千早振神にも何にたとふらん おのれ雲居に人をなしつつ