竜田河たちなば君が名を惜しみ
いはせの森の言はじとぞ思ふ
- 歌の意味
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竜田川の名のように噂が立ったならば、あなたの名が惜しいので、岩瀬の森の名のように、決して口外すまいと思う。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1033
詞書「忍びて住み侍りける人のもとより、かかる気色人に見すなと言へりければ」
噂が立ったらあなたの名が惜しいので、決して人には言うまいと思う、と詠んだ歌である。竜田河の「たつ」から噂が「立つ」を導き、岩瀬の森の「いは」から「言はじ」を導いて、地名を重ねながら秘密を守る誓いを詠んでいる。
詞書によれば、ひそかに通っていた相手から、このような様子を人に見せないでと言ってきたので詠んだ歌である。前歌の第千三十二首も人目を忍んで通う恋を詠んでおり、忍ぶ恋の歌が続いている。
作者の「もとかた」は在原元方である。在原業平の孫で、在原棟梁の子にあたる。古今和歌集の巻頭歌「年の内に春は来にけりひととせを去年とや言はん今年とや言はん」の作者として知られる。
初句「竜田河」は、大和国の竜田川のことで、「たつ」の音から二句の「たち」を導いている。
二句「たちなば君が」は、噂が立ったならばあなたの、の意で、「たち」に竜田河の「竜」の音と、噂が「立つ」意を掛けている。
三句「名を惜しみ」は、名が惜しいので、の意で、「み」は原因を表す接尾語である。
四句「いはせの森の」は、大和国の岩瀬の森の、の意で、「いは」の音から結句の「言はじ」を導いている。初句の竜田河とともに、地名の音で下の言葉を導く技法を重ねている。
結句「言はじとぞ思ふ」は、言うまいと思う、の意で、「じ」は打消しの意志、「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「思ふ」で結ぶ係り結びとなっている。
たつ:竜田川の竜の音と、噂が立つ意を掛ける
いはせのもり:大和国の岩瀬の森。「言はじ」を導く
けしき:様子、そぶり
- 作者
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在原元方
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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人知れず待つに寝られぬ有明の 月にさへこそあざむかれけれ
- 次の歌
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宇多の野はみみなし山か呼子鳥 呼ぶ声にだに答へざるらん