越えぬてふ名をな恨みそ鈴鹿山
いとど間近くならんと思ふを
- 歌の意味
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鈴鹿山を越えたという評判を恨まないでほしい。私はいっそう間近く、あなたのもとへ寄り添おうと思っているのだから。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1041
詞書「返し」
越えたという評判を恨まないでほしい、もっと間近になろうと思っているのに、と詠んだ歌である。前歌の「越ゆてふ名」と「鈴鹿山」を受け、噂が立つことを嘆く女に、噂どおりいっそう親しくなるつもりだと答えている。
詞書によれば、前歌の第千四十首への男の返しである。前歌が噂ばかりで訪れが遠のくと嘆いたのに対し、本歌は「間近く」と応じ、遠と近を入れ替えて切り返している。本巻の第千四十五首の初句にも「間近くて」が詠まれている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「越えぬてふ」は、越えたという、の意で、「ぬ」は完了の助動詞である。前歌の四句「越ゆてふ名」を受けている。
二句「名をな恨みそ」は、評判を恨まないでくれ、の意で、「な〜そ」は禁止を表す。ここで句切れとなる。
三句「鈴鹿山」は、前歌の三句を受け、越えていく恋の道筋を示している。
四句「いとど間近く」は、いっそう間近に、の意で、前歌の訴える隔たりに対して近さを言っている。
結句「ならんと思ふを」は、なろうと思っているのに、の意で、「ん」は意志の助動詞、「を」は詠嘆を込めた接続助詞である。
すずかやま:伊勢国と近江国の境の山。鈴鹿の関があった
な:評判、うわさ
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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音もせずなりもゆくかな鈴鹿山 越ゆてふ名のみ高く立ちつつ
- 次の歌
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わがためにかつはつらしとみ山木の こりともこりぬかかる恋せじ