うきことの繁き宿には忘れ草
植ゑてだに見しあきぞわびしき
- 歌の意味
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つらいことの多い私の家には、忘れ草を植えてさえみたのに、あなたに飽きられたこの秋は、やはりわびしいことだ。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1051
詞書「返し」
つらいことの多い家には忘れ草を植えてさえみたが、秋はわびしい、と詠んだ歌である。前歌の「忘れ草」を受け、憂いを忘れようと忘れ草を植えたのは自分のほうで、それでも飽きられた秋のわびしさは忘れられないと返している。
詞書によれば、前歌の第千五十首への返しである。前歌が忘れ草の生える家には行くまいと言ったのに対し、その忘れ草は憂さを忘れるために自分で植えたのだと答え、「行きてだに見じ」を「植ゑてだに見し」と言葉を写して切り返している。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「うきことの」は、つらいことの、の意である。
二句「繁き宿には」は、多い家には、の意で、「繁き」に草の繁る意を重ね、三句の「忘れ草」の縁語としている。
三句「忘れ草」は、憂いを忘れるという萱草のことで、前歌の初句を受けている。
四句「植ゑてだに見し」は、植えてさえみた、の意で、前歌の結句「行きてだに見じ」と対応させている。
結句「あきぞわびしき」は、秋はわびしい、の意で、「あき」に季節の「秋」と、相手に「飽き」られる意を掛けている。「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「わびしき」で結ぶ係り結びとなっている。
わすれぐさ:萱草。身につけると憂いを忘れるとされた草
あき:季節の秋と、飽きられる意の飽きを掛ける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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忘れ草名をもゆゆしみかりにても 生ふてふ宿は行きてだに見じ
- 次の歌
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数知らぬ思ひは君にあるものを 置き所なき心地こそすれ