八重葎さしてし門をいまさらに
何にくやしく開けて待ちけん
- 歌の意味
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八重葎が生い茂って閉ざしていた門を、今さらどうして、くやしいことに開けて待っていたのだろう。
- 鑑賞
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巻第十四 恋歌六 1055
詞書「久しう訪はざりける人の、思ひ出でて、今宵まうで来んか、門ささで相待てと申して、まうで来ざりければ」
八重葎に閉ざされていた門を、今さらどうして悔しくも開けて待っていたのだろう、と詠んだ歌である。久しく訪れのなかった男の言葉を信じて門を開けて待ったのに、来なかった悔しさを、葎の茂る荒れた門に寄せて詠んでいる。
詞書によれば、久しく訪れなかった人が思い出したように、今夜行くから門を閉めずに待っていてくれと言ってきたのに、来なかったので詠んだ歌である。本巻の第千三十二首も、来ると約束して来なかった人を待ち明かす歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「八重葎」は、幾重にも生い茂った葎、の意で、訪れる人のない荒れた家を表している。
二句「さしてし門を」は、閉ざしていた門を、の意で、「さし」は門を閉じる意である。葎が門を閉ざしていたことを言っている。
三句「いまさらに」は、今になって、の意である。
四句「何にくやしく」は、どうして悔しいことに、の意である。
結句「開けて待ちけん」は、開けて待っていたのだろう、の意で、「けん」は過去の原因を推量する助動詞である。二句の「さし」と対をなしている。
やへむぐら:幾重にも生い茂った葎
むぐら:野原や荒れ地に茂る雑草の総称
さす:門や戸を閉ざす
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
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わがたちて着るこそうけれ夏衣 おほかたとのみ見べき薄さを
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さを鹿の妻なき恋を高砂の 尾上の小松聞きも入れなん