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山隠れ消えせぬ雪のわびしきは
君まつの葉にかかりてぞふる

歌の意味
山陰に隠れて消えずにいる雪のわびしいことには、あなたを待つという松の葉にかかって降り続け、私もそうして日を過ごしている。
鑑賞
巻第十四 恋歌六 1073

詞書「返し」
 山陰に隠れて消えずにいる雪のわびしさは、あなたを待つ松の葉にかかって降ることだ、と詠んだ歌である。前歌の空で消える雪に対し、自分は宮仕えに身を隠しながら消えもせず、あなたを待ち続けて日を過ごしているのだと詠んでいる。
 詞書によれば、前歌の第千七十二首への女の返しである。前歌が空で消える雪を詠んだのを、山陰で「消えせぬ雪」と反転させて受けている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「山隠れ」は、山陰に隠れて、の意で、宮仕えの身で人目につかずにいることをたとえている。
 二句「消えせぬ雪の」は、消えずにいる雪の、の意で、前歌の結句「空に消ゆらん」と対をなしている。
 三句「わびしきは」は、わびしいのは、の意である。
 四句「君まつの葉に」は、あなたを待つ、松の葉に、の意で、「まつ」に「待つ」と「松」を掛けている。
 結句「かかりてぞふる」は、かかって降っている、の意で、「ふる」に雪が「降る」意と、時を「経る」意を掛けている。「ぞ」は強めの係助詞で、連体形「ふる」で結ぶ係り結びとなっている。

やまがくれ:山陰に隠れること
まつ:待つ意と、松を掛ける
ふる:雪が降る意と、時を経る意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
わが恋し君があたりを離れねば 降る白雪も空に消ゆらん
次の歌
あらたまの年は今日明日越えぬべし 相坂山を我や遅れん