音にのみ聞きつる恋を人知れず
つれなき人にならひぬるかな
- 歌の意味
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話に聞くばかりであった恋というものを、人知れず、つれない人のために、身をもって覚えてしまったことだ。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 641
詞書は前の歌に続き「題しらず」
これまで話に聞くだけだった恋というものを、つれない人を相手に、人知れず身をもって知ってしまったと詠む歌である。恋の苦しさを初めて自分のこととして味わった感慨を、「ならひぬる」と習い覚える形で表している。第六百三十八首の「恋を知りぬる」と同じく恋を初めて知る心を詠み、第六百二十七首、第六百二十八首の「音」の歌とは、噂に聞く対象が恋の相手から恋そのものへと変わっている。
初句「音にのみ」は、話にばかり、の意で、第六百二十八首の四句「音にのみやは」と同じ言い回しである。
二句「聞きつる恋を」は、聞いていた恋というものを、の意で、「つる」は完了の助動詞「つ」の連体形である。
三句「人知れず」は、人に知られないように、の意で、第六百三十四首の三句と同じ句である。
四句「つれなき人に」は、冷淡な人によって、の意である。次歌の第六百四十二首の結句「人はつれなし」と、つれない相手を詠む点で共通している。
結句「ならひぬるかな」は、習い覚えてしまったことだ、の意で、「ぬる」は完了の助動詞「ぬ」の連体形、「かな」は詠嘆を表す。
ならふ:習ふ。習い覚える、身につける
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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水底に生ふる玉藻のうちなびき 心を寄せて恋ふるこのころ
- 次の歌
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いかにせむ命は限りあるものを 恋は忘れず人はつれなし