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水底に生ふる玉藻のうちなびき
心を寄せて恋ふるこのころ

歌の意味
水の底に生えている玉藻がなびくように、心をひたすら寄せて恋い慕うこのごろである。
鑑賞
巻第十一 恋歌一 640

詞書は前の歌に続き「題しらず」
 水底に生える玉藻がなびくように、心を寄せて恋い慕うこのごろだと詠む歌である。水の流れになびく藻の姿に、相手に一途に心を寄せる自分をよそえている。前の二首が水辺の舟を序に用いたのに続き、水底の藻を序に用いている。万葉集の巻十一に、ほぼ同じ趣の歌が見える。
 作者の「人まろ」は柿本人麻呂である。持統天皇、文武天皇の時代に仕えた宮廷歌人で、歌聖と称される。

 初句「水底に」は、水の底に、の意である。
 二句「生ふる玉藻の」は、生えている美しい藻が、の意で、「玉」は美称である。ここまでが三句の「うちなびき」を導く序詞である。
 三句「うちなびき」は、なびいて、の意で、「うち」は語調を整える接頭語である。
 四句「心を寄せて」は、心を寄せて、の意で、藻が流れに寄るさまと、心が相手に寄るさまを重ねている。
 結句「恋ふるこのころ」は、恋い慕うこのごろである、の意で、体言止めである。

たまも:玉藻。藻の美称
なびく:靡く。風や流れに従って横に伏す、心が寄り従う
作者
柿本人麻呂
出典
拾遺和歌集
前の歌
大井川下す筏の水馴れ棹 見馴れぬ人も恋しかりけり
次の歌
音にのみ聞きつる恋を人知れず つれなき人にならひぬるかな