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白河の滝のいと見まほしけれど
みだりに人は寄せじものをや

歌の意味
白河の滝の糸を、とても見たいのだけれど、むやみに人を近寄らせはなさらないでしょうにね。
鑑賞
巻第十五 雑歌一 1086

詞書「太政大臣の白河の家にまかり渡りて侍りけるに、人の曹司にこもり侍りて」
 白河の滝の糸のような流れをとても見たいけれど、むやみに人を近寄らせはなさらないでしょう、と詠んだ歌である。滝の流れを糸に見立て、「いと」「みだり」に糸の縁を響かせながら、邸の主に滝を見せてほしいとほのめかしている。
 詞書によれば、太政大臣藤原忠平の白河の家に移っていた時、人の部屋にこもっていて詠んだ歌である。次歌に忠平の返しがあり、白河の滝を詠む贈答となっている。
 作者の中務は、宇多天皇の皇子敦慶親王と歌人伊勢との間に生まれた娘である。中務卿であった父にちなんでこう呼ばれ、三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「白河の」は、白河の、の意で、忠平の邸のあった白河の地をいう。次歌の初句も同じ「しらかはの」で始まっている。
 二句「滝のいと見ま」は、滝の糸を、とても見たい、の意で、「いと」に滝の流れを見立てた「糸」と、とても、の意の「いと」を掛けている。次歌の二句にも「滝のいと」が詠まれている。
 三句「ほしけれど」は、二句から続いて「見まほしけれど」となり、見たいけれど、の意で、「まほし」は願望の助動詞、「ど」は逆接を表す。
 四句「みだりに人は」は、むやみに人を、の意で、「みだり」に糸が乱れる意を響かせ、糸の縁語としている。
 結句「寄せじものをや」は、近寄らせはなさらないでしょうにね、の意で、「じ」は打消の推量、「ものを」と「や」は詠嘆を表す。

いと:滝の流れを見立てた糸と、とても、の意の「いと」を掛ける
みだり:むやみに、の意に、糸が乱れる意を響かせる
ざうし:貴族の邸などで女房に与えられた部屋
作者
中務
出典
後撰和歌集
前の歌
伊勢の海の釣りのうけなるさまなれど 深き心は底に沈めり
次の歌
白河の滝のいとなみ乱れつつ よるをぞ人は待つといふなる