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古里の三笠の山は遠けれど
声は昔のうとからぬかな

歌の意味
かつてなじんだ三笠の山は遠くなってしまったけれど、その声は昔のままに親しく聞こえることだ。
鑑賞
巻第十五 雑歌一 1106

詞書「兼輔朝臣、宰相中将より中納言になりて、又の年賭弓の還立の饗にまかりて、これかれ思ひ述ぶるついでに」
 なじみの三笠山は遠くなったが、声は昔のままで親しい、と詠んだ歌である。近衛府を三笠山にたとえ、中将から中納言に移って近衛府を離れた身にも、かつての同僚たちの声はなお親しく響くと懐かしんでいる。
 詞書によれば、兼輔が参議で近衛中将を兼ねる宰相中将から中納言になった翌年、賭弓の還立の饗に出向き、人々が思いを述べ合った折に詠んだ歌である。三笠山は近衛府をたとえる語として用いられた。
 作者の藤原兼輔は、中納言に至り、賀茂川の堤に邸があったことから堤中納言と呼ばれた。紫式部の曾祖父にあたる。

 初句「古里の」は、昔なじみの、の意で、かつて仕えた近衛府を古里にたとえている。
 二句「三笠の山は」は、大和国の三笠山は、の意で、近衛府を指している。
 三句「遠けれど」は、遠いけれども、の意で、近衛府を離れたことをいう。「ど」は逆接を表す。
 四句「声は昔の」は、声は昔のように、の意で、かつての同僚たちの声をいう。
 結句「うとからぬかな」は、疎遠でなく親しく感じられることだ、の意で、「かな」は詠嘆を表す。

みかさのやま:大和国の三笠山。近衛府をたとえる
のりゆみ:正月に宮中で行われた弓の競技。賭弓
かへりだち:賭弓や相撲ののち、勝った方の大将が自邸で開く饗宴。還立
さいしやうちゆうじやう:参議で近衛中将を兼ねる者
作者
藤原兼輔
出典
後撰和歌集
前の歌
年を経て濁りだにせぬさびえには 玉も帰りて今ぞすむべき
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引きて植ゑし人はむべこそ老いにけれ 松の木高くなりにけるかな