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古りぬとて思ひも捨てじ唐衣
よそへてあやな恨みもぞする

歌の意味
古くなったからといって見捨てたりはしない唐衣なのに、それに自分をなぞらえて、わけもなく恨んだりされては困る。
鑑賞
巻第十五 雑歌一 1114

詞書「返し」
 古びたからといって見捨てはしない衣なのに、それに自分をなぞらえて、わけもなく恨まれては困る、と詠んだ歌である。前歌の衣が古いというからかいを受け、古いものも大切にする心を示しつつ、大輔が自分を古い衣になぞらえて恨むのを打ち消している。
 前歌の大輔の歌に対する雅正の返しである。
 作者の藤原雅正は、藤原兼輔の子で、紫式部の祖父にあたる。

 初句「古りぬとて」は、古くなったからといって、の意で、前歌の古びた衣を受けている。
 二句「思ひも捨てじ」は、見捨てたりはしない、の意で、「じ」は打消の意志を表す。
 三句「唐衣」は、衣の美称で、前歌の「衣」を受けている。
 四句「よそへてあやな」は、なぞらえて、わけもなく、の意で、「あやな」は筋の通らないことを表す。
 結句「恨みもぞする」は、恨んだりしては困る、の意で、「もぞ」は好ましくない事態を危ぶむ気持ちを表し、連体形「する」で結ぶ係り結びとなっている。

からころも:衣の美称
よそふ:なぞらえる。たとえる
作者
藤原雅正
出典
後撰和歌集
前の歌
古里の奈良の都の始めより なれにけりとも見ゆる衣か
次の歌
流れての世をも頼まず水の上の 泡に消えぬる憂き身と思へば