むばたまの今宵ばかりぞあけ衣
あけなば人をよそにこそ見め
- 歌の意味
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こうして共にいるのは今宵だけなのだ。緋の衣のあなたを、夜が明けたなら、よそ人として見ることになるだろう。
- 鑑賞
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巻第十五 雑歌一 1116
詞書「藤原さねきが蔵人より冠賜はりて、明日殿上まかり下りむとしける夜、酒賜べけるついでに」
今宵ばかりのことだ、緋の衣を着たあなたを、夜が明ければよそ人として見ることになろう、と詠んだ歌である。蔵人から五位に昇って殿上を去る人を祝いつつ、明日からは遠い人になる名残惜しさを、「あけ」の掛詞にこめている。
詞書によれば、藤原さねきが蔵人から五位に叙せられ、翌日には殿上を退くことになった夜、酒をふるまった折に詠んだ歌である。五位に叙せられた六位の蔵人は、蔵人の職を離れて殿上を下りるのが例であった。藤原さねきは詳しい伝が未詳である。
作者の藤原兼輔は、中納言に至り、賀茂川の堤に邸があったことから堤中納言と呼ばれた。紫式部の曾祖父にあたる。
初句「むばたまの」は、夜に関わる語にかかる枕詞で、ここでは二句の「今宵」にかかる。
二句「今宵ばかりぞ」は、今夜だけだ、の意で、「ぞ」は強意の係助詞で、結びの語が省かれている。ここで句切れとなる。
三句「あけ衣」は、緋色の衣、の意で、五位の者が着る袍の色をいう。本巻の第千百二十三首、第千百二十四首にも位の色としての「あけ」が詠まれている。
四句「あけなば人を」は、夜が明けたなら、その人を、の意で、「あけ」に三句の緋の「あけ」を重ね、夜が「明け」る意を掛けている。
結句「よそにこそ見め」は、よそ人として見ることになろう、の意で、「こそ」は強意の係助詞で、已然形「め」で結ぶ係り結びとなっている。
あけごろも:緋色の衣。五位の者が着る袍
あけ:緋色の意と、夜が明ける意を掛ける
かうぶり:位階。ここは五位に叙せられること
くらうど:天皇の側近として雑事を務める蔵人所の職員
- 作者
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藤原兼輔
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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流れての世をも頼まず水の上の 泡に消えぬる憂き身と思へば
- 次の歌
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人渡すことだになきを何しかも ながらの橋と身のなりぬらん