ふるる身は涙の中に見ゆればや
ながらの橋にあやまたるらん
- 歌の意味
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古びていく身は、涙の流れの中に見えるからだろうか、長柄の橋と見誤られるのだろう。
- 鑑賞
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巻第十五 雑歌一 1118
詞書「御返し」
年を経て古びていく身が涙の中に見えるからだろうか、長柄の橋と見誤られるのだろう、と詠んだ歌である。前歌の長柄の橋の嘆きを受け、川に架かる橋のように涙の流れの中にあるからこそそう見えるのだと応じ、后の悲しみに寄り添っている。
前歌の七条后の歌に対する伊勢の返しである。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、七条后藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「ふるる身は」は、古びていく身は、の意で、「ふる」は年を経て古くなる意である。
二句「涙の中に」は、涙の中に、の意で、涙を川の水に重ね、橋の縁としている。
三句「見ゆればや」は、見えるからだろうか、の意で、「や」は疑問の係助詞で、結句の連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。
四句「ながらの橋に」は、長柄の橋に、の意で、前歌の四句「ながらの橋と」を受けている。
結句「あやまたるらん」は、見誤られるのだろう、の意で、「る」は受身の助動詞、「らん」は原因推量の助動詞で、三句の「や」を受けて結んでいる。
ふる:年を経て古くなる
あやまつ:見誤る。取り違える
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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人渡すことだになきを何しかも ながらの橋と身のなりぬらん
- 次の歌
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ひとりのみながめて年をふるさとの 荒れたるさまをいかに見るらむ