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数ならぬ身をもちにて吉野山
高きなげきを思ひこりぬる

歌の意味
取るに足りない身でありながら、吉野山の高い木を投げ木として樵るように、身の程を越えた高い嘆きを重ね、すっかり懲りてしまった。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1167

詞書「題しらず」
 取るに足りない身で吉野山の高い木を樵るように、高望みの嘆きを重ねてすっかり懲りた、と詠んだ歌である。「なげき」に嘆きと薪の投げ木を、「こり」に懲りと樵りを掛け、身分の高い人を思って重ねた嘆きに懲り果てた心を、吉野山の木樵に託している。
 次歌に返しがあり、贈答となっている。二句の「もちにて」は語義に明らかでない点が残る。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「数ならぬ」は、取るに足りない、の意で、本巻の第千百六十九首の初句も同じ「数ならぬ」で始まり、卑下する身の歌が並んでいる。
 二句「身をもちにて」は、この身でありながら、の意とみられる。
 三句「吉野山」は、大和国の吉野山で、高い木の茂る山として四句の「高き」を導いている。次歌の初句もこの語で始まっている。
 四句「高きなげきを」は、高い投げ木を、の意で、「なげき」に「嘆き」と薪の「投げ木」を掛けている。「高き」に身分の高い人への思いを重ねている。
 結句「思ひこりぬる」は、思い懲りてしまった、の意で、「こり」に「懲り」と木を「樵り」を掛けている。

なげき:嘆きの意と、薪にする投げ木を掛ける
こる:懲りる意と、木を樵る意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
死出の山たどるたどるも越えななで 憂き世の中に何帰りけん
次の歌
吉野山越えん事こそかたからめ こらむなげきの数は知りなん