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吉野山越えん事こそかたからめ
こらむなげきの数は知りなん

歌の意味
吉野山を越えることこそ難しいだろうが、あなたが樵る投げ木、つまり重ねる嘆きの数は、わかってあげられるだろう。
鑑賞
巻第十六 雑歌二 1168

詞書「返し」
 吉野山を越えることは難しいだろうが、樵る投げ木の数、つまり嘆きの数はわかるだろう、と詠んだ歌である。前歌の吉野山の木樵の比喩を受け、身分の隔てを越えることはかなわないが、あなたの嘆きの深さはよく察していると応じている。
 前歌に対する返しである。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「吉野山」は、前歌の三句を受けている。
 二句「越えん事こそ」は、越えることこそ、の意で、身分の隔てを越えることをたとえている。「こそ」は強意の係助詞で、三句の已然形「め」で結ぶ係り結びとなっている。
 三句「かたからめ」は、難しいだろうが、の意で、「め」は推量の助動詞「む」の已然形で、こそ〜已然形の形で逆接に続いている。
 四句「こらむなげきの」は、樵るであろう投げ木の、の意で、前歌の「なげき」「こり」を受け、嘆きと投げ木、樵ると懲りるを重ねている。
 結句「数は知りなん」は、その数はわかるだろう、の意で、「なん」は強い推量を表す。

なげき:嘆きの意と、薪にする投げ木を掛ける
こる:木を樵る意と、懲りる意を掛ける
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
数ならぬ身をもちにて吉野山 高きなげきを思ひこりぬる
次の歌
数ならぬ身に置く宵の白玉は 光見えさすものにぞありける