世の中は憂きものなれや人言の
とにもかくにも聞こえ苦しき
- 歌の意味
-
世の中はつらいものなのだろうか。人の噂が、あれこれと聞こえてきて、聞くのもつらいことだ。
- 鑑賞
-
巻第十六 雑歌二 1176
詞書「題しらず」
世の中はつらいものなのか、人の噂があれこれと聞こえてきて聞き苦しい、と詠んだ歌である。善きにつけ悪しきにつけ人の口にのぼる煩わしさを嘆き、世に交わることのつらさを述べている。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られ、小倉百人一首には「人はいさ心も知らずふるさとは」の歌が採られている。
初句「世の中は」は、世の中は、の意である。
二句「憂きものなれや」は、つらいものなのだろうか、の意で、「や」は疑問を表す。ここで句切れとなる。
三句「人言の」は、人の噂が、の意である。
四句「とにもかくにも」は、あれこれと、何かにつけて、の意である。
結句「聞こえ苦しき」は、聞こえてきて聞くのもつらい、の意で、連体形で結んで詠嘆の気持ちを表している。
ひとごと:人のうわさ
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
春や来し秋や行きけんおぼつかな 陰の朽木と世を過ぐす身は
- 次の歌
-
武蔵野は袖ひつばかり分けしかど 若紫は尋ねわびにき