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秋の夜に雨と聞こえて降るものは
風にしたがふ紅葉なりけり

歌の意味
秋の夜に、雨かと聞こえて降るものは、風に従って散る紅葉であったのだ。
鑑賞
巻第三 秋歌 208

詞書「題しらず」
 秋の夜に雨の音かと聞こえたものは、実は風に吹かれて散り落ちる紅葉の音であったと気づく歌である。闇の中で音だけを頼りに紅葉の散るさまをとらえ、耳による見立てを用いている。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。

 初句「秋の夜に」は、秋の夜に、の意である。
 二句「雨と聞こえて」は、雨の音と聞こえて、の意で、紅葉の散る音を雨の音に見立てている。
 三句「降るものは」は、降ってくるものは、の意である。
 四句「風にしたがふ」は、風に従って散る、の意である。前歌が嵐の音に心を揺さぶられたのに続き、本歌も夜の風の中の音を詠んでいる。
 結句「紅葉なりけり」は、紅葉であったのだ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。

したがふ:他のものの動きに従う。従ふ
作者
紀貫之
出典
拾遺和歌集
前の歌
秋山の嵐の声を聞く時は 木の葉ならねど物ぞ悲しき
次の歌
心もて散らんだにこそ惜しからめ などか紅葉に風の吹くらん