あはれてふ事こそ常の口の端に
かかるや人を思ふなるらん
- 歌の意味
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「あわれ」という言葉こそ、いつも私の口の端にかかっているが、それはあなたを思っているからなのだろう。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1179
詞書「ある所に宮仕へし侍りける女のあだ名立ちけるがもとより、おのれが上はそこになん口の端にかけて言はるなると、恨みて侍りければ」
「あわれ」という言葉こそいつも口の端にかかるが、それは人を思っているからだろう、と詠んだ歌である。浮き名の立った女から、私のことをあなたが言いふらしていると恨まれたのに対し、口にしていたのは悪口ではなく、あなたを思う「あわれ」の言葉だと言い逃れている。
詞書によれば、ある所に宮仕えしていた女が浮き名を立てられ、私のうわさはあなたが口にして言っているそうだ、と恨んできたので詠んだ歌である。本巻の第千百九十二首も「あはれてふ事」で始まり、同じ句を持つ歌が置かれている。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「あはれてふ」は、「あわれ」という、の意で、「てふ」は「といふ」がつづまった形である。
二句「事こそ常の」は、言葉こそいつもの、の意で、「事」に「言」を重ねている。
三句「口の端に」は、口の端に、の意で、詞書の女の言葉「口の端にかけて」を受けている。
四句「かかるや人を」は、かかるのは人を、の意で、「や」は疑問の係助詞で、結句の連体形「らん」で結ぶ係り結びとなっている。
結句「思ふなるらん」は、思っているからなのだろう、の意で、「らん」は現在の原因推量の助動詞で、四句の「や」を受けて結んでいる。
くちのは:口の端。うわさ
あだな:浮気だという評判
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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大荒木の森の草とやなりにけむ かりにだに来て問ふ人のなき
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吹く風の下の塵にもあらなくに さも立ちやすき我がなき名かな