吹く風の下の塵にもあらなくに
さも立ちやすき我がなき名かな
- 歌の意味
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吹く風の下に舞う塵でもないのに、なんとまあ立ちやすい、私の根も葉もない浮き名であることよ。
- 鑑賞
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巻第十六 雑歌二 1180
詞書「題しらず」
吹く風の下の塵でもないのに、なんと立ちやすい私の根も葉もない浮き名か、と詠んだ歌である。風に舞い上がる塵のように、たやすく立ってしまう身に覚えのない噂の煩わしさを嘆いている。
前歌が浮き名を立てられた女をめぐる歌であるのに続き、本歌も立ちやすい浮き名を嘆いており、噂の歌が続いている。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「吹く風の」は、吹く風の、の意である。
二句「下の塵にも」は、風の下に舞う塵でも、の意で、風に吹き上げられる軽い塵をいう。
三句「あらなくに」は、ないのに、の意で、「なくに」は打消の「ず」のク語法に「に」がついた形で、逆接を表す。
四句「さも立ちやすき」は、なんとまあ立ちやすい、の意で、「立つ」は塵の縁語で、浮き名が立つ意を重ねている。
結句「我がなき名かな」は、私の根も葉もない噂であることよ、の意で、「なき名」は無実の浮き名をいう。「かな」は詠嘆を表す。
なきな:根も葉もない噂。無実の浮き名
ちり:塵
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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あはれてふ事こそ常の口の端に かかるや人を思ふなるらん
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故郷の佐保の川水今日もなほ かくて逢ふ瀬はうれしかりけり