- 歌の意味
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島陰に隠れて荒磯に通う葦辺の鶴が踏み残した足跡は、せめて波が消してほしい。
- 鑑賞
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巻第十七 雑歌三 1212
詞書「いと忍びて語らひける女のもとにつかはしける文を、心にもあらで落としたりけるを見つけて、つかはしける」
島陰の荒磯に通う葦辺の鶴が踏み置いた足跡は、波が消してほしい、と詠んだ歌である。ひそかに通う恋を島陰の鶴にたとえ、「踏み」と「文」を掛けて、落とした手紙の跡が人目に残らぬよう願っている。
詞書によれば、ごく内密に語らっていた女のもとに送った手紙を、心ならずも落としてしまったのを見つけて、送った歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。
初句「島隠れ」は、島陰に隠れて、の意で、人目を忍ぶ恋をたとえている。
二句「荒磯に通ふ」は、荒い磯に通う、の意である。
三句「葦鶴の」は、葦辺にいる鶴の、の意である。
四句「ふみおく跡は」の「ふみ」は、「踏み」と「文」を掛けた掛詞で、鶴が踏み残した足跡の意と、書き残した手紙の跡の意を重ねている。
結句「波も消たなん」は、波が消してほしい、の意で、「なん」は他にあつらえ望む終助詞である。「荒磯」「波」は縁語である。
ありそ:波の荒い磯
あしたづ:葦辺にいる鶴
ふみおく:「踏み置く」の意と、「文」を置く意を掛ける
けつ:消す
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
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尽きもせず憂きことの葉の多かるを 早く嵐の風も吹かなむ
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身は早くなきもののごとなりにしを 消えせぬものは心なりけり