命をば逢ふにかふとか聞きしかど
我やためしに逢はぬ死にせん
- 歌の意味
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命は逢うことと引き換えにするものだと聞いていたけれど、私は、逢わないままで死ぬことの前例となるのだろうか。
- 鑑賞
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巻第十一 恋歌一 682
詞書は前の歌に続き「題しらず」
命は逢うことと引き換えにすると聞いていたが、自分は逢わないまま死ぬ前例となるのだろうかと詠む歌である。命を捨てても逢えないかもしれないという絶望を、世の言い伝えに反する「ためし」になるという形で表している。第六百七十五首の「逢ふには身をもかふとこそ聞け」を受けるような言い回しで、第六百八十四首とともに命と逢うことを引き換えにする趣向の歌である。
初句「命をば」は、命を、の意で、「ば」は「を」を強める。
二句「逢ふにかふとか」は、逢うことと引き換えにすると、の意で、「とか」は伝え聞いたことを表す。第六百七十五首の四句と結句「逢ふには身をもかふとこそ聞け」と同じ趣向で、第六百八十四首の結句「逢ふにかへてん」にも通じる。
三句「聞きしかど」は、聞いていたけれど、の意で、「しか」は過去の助動詞「き」の已然形である。
四句「我やためしに」は、私が前例として、の意で、係助詞「や」は疑問を表し、結句の「ん」の連体形で結ぶ係り結びである。
結句「逢はぬ死にせん」は、逢わないまま死ぬことになるのだろうか、の意である。第六百五十五首の「逢ひ見ぬほどに恋ひ死なば」と、逢わずに死ぬことを恐れる点で通い合う。
ためし:例。前例、手本
かふ:替ふ。引き換える
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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逢ふことをいつとも知らで君が言はむ ときはの山のまつぞ苦しき
- 次の歌
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行く末はつひに過ぎつつ逢ふことの 年月なきぞわびしかりける