大堰川浮かべる舟のかがり火に
をぐらの山も名のみなりけり
- 歌の意味
-
大堰川に浮かべた舟のかがり火のために、小暗いという名の小倉山も、名ばかりであったことだ。
- 鑑賞
-
巻第十七 雑歌三 1231
詞書「大堰なる所にて、人々酒たうべけるついでに」
大堰川に浮かべた舟のかがり火で、小倉山も名ばかりであった、と詠んだ歌である。「小倉」に「小暗し」を掛け、かがり火に照らされて小暗くもない山のさまに、宴の明るいにぎわいをたたえている。
詞書によれば、大堰という所で、人々が酒を飲んだ折に詠んだ歌である。
作者の「なりひらの朝臣」は在原業平である。阿保親王の子で、在原行平の異母弟にあたる。六歌仙、三十六歌仙の一人で、伊勢物語の主人公に擬せられる。
初句「大堰川」は、山城の国の大堰川で、嵯峨の小倉山のふもとを流れる。
二句「浮かべる舟の」は、浮かべた舟の、の意である。
三句「かがり火に」は、かがり火のために、の意である。
四句「をぐらの山も」の「をぐら」は、地名の「小倉」と「小暗」を掛けた掛詞で、小暗いという名の小倉山も、の意である。
結句「名のみなりけり」は、名ばかりであったことだ、の意で、「なりけり」は気づきを表す。
をぐら:山の名の「小倉」の意と、薄暗い意の「小暗」を掛ける
たうぶ:飲む、食べる
- 作者
-
在原業平
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
山深み主に似たる植ゑ木をば 見えぬ色とぞ言ふべかりける
- 次の歌
-
飛鳥川我が身ひとつの淵瀬ゆゑ なべての世をも恨みつるかな