見えもせぬ深き心を語りては
人に勝ちぬと思ふものかは
- 歌の意味
-
目に見えもしない深い心を言葉で語っただけで、ほかの人に勝ったと思うものだろうか。
- 鑑賞
-
巻第十八 雑歌四 1278
詞書「題しらず」
見えもしない深い心を語っただけで、人に勝ったと思うものか、と詠んだ歌である。自分の思いの深さを言い立てる相手に、言葉だけでは心の深さは測れないとたしなめている。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「見えもせぬ」は、目に見えもしない、の意である。
二句「深き心を」は、深い心を、の意で、相手が言い立てる思いの深さをいう。
三句「語りては」は、言葉で語っては、の意である。
四句「人に勝ちぬと」は、ほかの人に勝ったと、の意である。
結句「思ふものかは」は、思うものか、いや思いはしない、の意で、「かは」は反語を表す。本巻の第千二百五十二首も同じく「ものかは」で結んでいる。
かたる:言葉に出して述べる
- 作者
-
伊勢
- 出典
-
後撰和歌集
- 前の歌
-
まだきから思ひ濃き色に染めむとや 若紫のねを尋ぬらん
- 次の歌
-
伊勢の海に年経て住みし海人なれど かかるみるめはかづかざりしを