伊勢の海に年経て住みし海人なれど
かかるみるめはかづかざりしを
- 歌の意味
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伊勢の海に長年住んできた海人ではあるけれど、このような海松布を潜って得たことはなかったのに。このようなありがたいお下がりを賜る目に遭ったことはなかったのに。
- 鑑賞
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巻第十八 雑歌四 1279
詞書「亭子院にさぶらひけるに、御斎の下ろし賜はせたりければ」
伊勢の海に長年住んだ海人だが、このような海松布はかづいたことがなかった、と詠んだ歌である。自分の名の「伊勢」を詠み込み、法皇から斎食のお下がりを賜った光栄を、海人が潜っても得られなかった海松布にたとえて感謝している。
詞書によれば、宇多法皇の御所である亭子院に仕えていたとき、法皇の斎食のお下がりを賜ったので詠んだ歌である。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「伊勢の海に」は、伊勢の国の海に、の意で、作者自身の名の「伊勢」を詠み込んでいる。
二句「年経て住みし」は、長年住んできた、の意で、長く宮仕えしてきた身をいう。
三句「海人なれど」は、海人ではあるけれど、の意で、自分を伊勢の海の海人にたとえている。
四句「かかるみるめは」の「みるめ」は、海藻の「海松布」と「見る目」を掛けた掛詞で、このような海松布の意と、このようなありがたい目を見ることの意を重ねている。
結句「かづかざりしを」の「かづく」は、海に「潜く」意と、褒美を「被く」意を掛けた掛詞で、潜って得たことも、賜ったこともなかったのに、の意である。「を」は詠嘆を表す。
ていじのゐん:宇多法皇の御所
とき:僧が正午前にとる食事、斎食
おろし:目上の人の食べ残し、お下がり
みるめ:海藻の「海松布」の意と、「見る目」を掛ける
かづく:海に「潜く」意と、褒美を「被く」意を掛ける
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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見えもせぬ深き心を語りては 人に勝ちぬと思ふものかは
- 次の歌
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あしひきの山の山鳥かひもなし 峰の白雲立ちし寄らねば