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あしひきの山の山鳥かひもなし
峰の白雲立ちし寄らねば

歌の意味
山の山鳥のように独り寂しく過ごしているかいもない。峰の白雲が立ち寄って来ないように、あなたが立ち寄ってくれないので。
鑑賞
巻第十八 雑歌四 1280

詞書「粟田の家にて人につかはしける」
 山の山鳥はかいもない、峰の白雲が立ち寄らないので、と詠んだ歌である。粟田の家で独り過ごす身を、夜は雌雄が峰を隔てて寝るという山鳥にたとえ、白雲のように訪れてくれない相手を待ちわびている。
 詞書によれば、粟田の家から人に送った歌である。
 作者の「かねすけの朝臣」は藤原兼輔である。藤原利基の子で、中納言に至った。賀茂川の堤に邸があったことから堤中納言と呼ばれ、紫式部の曽祖父にあたる。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「みかの原わきて流るるいづみ川」の歌が採られている。

 初句「あしひきの」は、「山」にかかる枕詞である。本巻の第千二百九十九首も同じ初句で始まっている。
 二句「山の山鳥」は、山にすむ山鳥、の意で、山鳥は雌雄が夜は峰を隔てて別々に寝るとされ、独り寝のたとえとされる。
 三句「かひもなし」は、かいもない、の意で、ここで句切れとなる。
 四句「峰の白雲」は、峰にかかる白雲、の意で、訪れてほしい相手をたとえている。
 結句「立ちし寄らねば」は、立ち寄らないので、の意で、「し」は強意の副助詞である。「立つ」は「雲」の縁語である。

やまどり:キジ科の鳥、雌雄が峰を隔てて寝るとされた
あはた:山城の国の地名、京の東の粟田
作者
藤原兼輔
出典
後撰和歌集
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