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鈴虫に劣らぬ音こそなかれけれ
昔の秋を思ひやりつつ

歌の意味
鈴虫に劣らないほどの声をあげて、自然と泣かれてしまうことだ。昔の秋をはるかに思いやりながら。
鑑賞
巻第十八 雑歌四 1287

詞書「昔を思ひ出でて、むらのこの内侍につかはしける」
 昔の秋を思いやりながら、鈴虫に劣らないほど声をあげて泣かれる、と詠んだ歌である。秋に鳴く鈴虫に自分の泣く声を重ね、かつて共に過ごした秋の日々を懐かしんでいる。
 詞書によれば、昔を思い出して、むらのこの内侍に送った歌である。むらのこの内侍は宮中の女官とみられるが、詳しい伝は未詳である。
 作者の「左大臣」は藤原実頼である。藤原忠平の長男で、後撰和歌集が編まれた村上天皇の時代に左大臣であり、のちに関白、太政大臣に至った。小野宮殿と呼ばれた。

 初句「鈴虫に」は、秋に鳴く鈴虫に、の意である。
 二句「劣らぬ音こそ」は、劣らない声を、の意で、「こそ」は強意の係助詞である。
 三句「なかれけれ」の「なか」は、虫が「鳴く」と人が「泣く」を掛けた掛詞で、自然と泣かれる、の意である。「れ」は自発を表し、二句の「こそ」を受けて已然形「けれ」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなり、下の句と倒置になっている。
 四句「昔の秋を」は、昔の秋を、の意で、かつて共に過ごした秋の日々をいう。
 結句「思ひやりつつ」は、思いやりながら、の意で、「つつ」は継続を表す。

なく:虫が「鳴く」意と、人が「泣く」意を掛ける
ないし:内侍司の女官
作者
藤原実頼
出典
後撰和歌集
前の歌
思ひやる方も知られず苦しきは 心まどひの常にやあるらむ
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夕暮れの寂しきものは朝顔の 花を頼める宿にぞありける