打ち捨てて君しいなばの露の身は
消えぬばかりぞありと頼むな
- 歌の意味
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私を見捨ててあなたが因幡へ去ってしまったら、露のようにはかない私の身は、ただ消えずにいるというだけのことだ。生きているものと当てにしないでほしい。
- 鑑賞
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巻第十九 離別歌 1310
詞書「京に侍りける女子を、いかなる事か侍りけん、心憂しとてとどめ置きて、因幡の国へまかりければ、娘」
私を捨ててあなたが因幡へ去ったら、露の身はただ消えずにいるだけだ、生きていると当てにするな、と詠んだ歌である。都に置き去りにされる娘が、父の仕打ちを恨み、露のようにはかない身の心細さを訴えている。
詞書によれば、京にいた娘を、どういう事情があったのか、気に入らないといって都に残して、因幡の国へ下ったので、娘が詠んだ歌である。
作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。
初句「打ち捨てて」は、私を見捨てて、の意である。
二句「君しいなばの」の「いなば」は、「往なば」と国名の「因幡」を掛けた掛詞で、あなたが去ったなら、の意と、行き先の因幡を重ねている。「し」は強意の副助詞である。
三句「露の身は」は、露のようにはかない身は、の意である。
四句「消えぬばかりぞ」は、ただ消えずにいるだけだ、の意で、「ぞ」は強意の係助詞である。「消ゆ」は「露」の縁語である。
結句「ありと頼むな」は、生きているものと当てにするな、の意で、「な」は禁止を表す。四句の「ぞ」の結びは、続く句に流れて消えている。
いなば:「往なば」の意と、国名の「因幡」を掛ける
いぬ:去る、行ってしまう
- 作者
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よみ人しらず
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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このたびも我を忘れぬものならば うち見むたびに思ひ出でなん
- 次の歌
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惜しと思ふ心はなくてこのたびは 行く馬に鞭をおほせつるかな