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恋しくは言伝もせむ帰るさの
雁がねはまづ我が宿に鳴け

歌の意味
恋しくなったら言伝もしよう。北へ帰って行く雁よ、まずは私の家に来て鳴いておくれ。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1318

詞書「三月ばかり、越の国へまかりける人に、酒賜うびけるついでに」
 恋しくなったら言伝をしよう、帰って行く雁はまず我が家で鳴け、と詠んだ歌である。三月に北国の越へ下る人を、同じころ北へ帰る雁に重ね、雁を便りの使いとして、まず我が家に寄って鳴いてほしいと願っている。
 詞書によれば、三月ごろ、越の国へ下る人に酒をふるまった折に詠んだ歌である。雁が手紙を運ぶという故事を踏まえている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「恋しくは」は、恋しくなったら、の意である。
 二句「言伝もせむ」は、言伝もしよう、の意で、「む」は意志を表す。ここで句切れとなる。
 三句「帰るさの」は、帰って行く途中の、の意で、春に北へ帰る雁をいう。越の国へ下る人の道行きと重なっている。
 四句「雁がねはまづ」は、雁はまず、の意で、雁を便りを運ぶ使いと見ている。
 結句「我が宿に鳴け」は、私の家で鳴け、の意で、命令形で結んでいる。

かへるさ:帰る途中、帰り道
かりがね:雁、また雁の鳴く声
ことづて:人に頼んで伝える言葉
こし:北陸地方の古称
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
唐衣たつ日をよそに聞く人は かへすばかりのほども恋しを
次の歌
別れてはいつ逢ひ見むと思ふらん 限りある世の命ともなし