古典和歌stream

背かれぬ松の千歳のほどよりも
ともともとだに慕はれぞせし

歌の意味
離れることのできない松の千年の長さよりもなお、「ともに、ともに」とばかり、慕わしく思われたことだ。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1320

詞書「題しらず」
 背くことのできない松の千年よりも、ともにともにとばかり慕われた、と詠んだ歌である。千年変わらない松にもまさって、共に行きたいと慕う心の深さを詠んでいるとみられるが、語句の続き方に取りにくいところがあり、解釈は定まらない。
 次歌はその返しで、二首は贈答の一組となっている。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。原文の作者表記は「よみ人も」とあるが、ここでは「よみ人しらず」として扱う。

 初句「背かれぬ」は、背くことのできない、離れられない、の意である。
 二句「松の千歳の」は、松の千年の、の意で、松は千年変わらないものとされる。
 三句「ほどよりも」は、その長さよりも、の意である。
 四句「ともともとだに」は、「ともに、ともに」とさえ、の意とみられ、共に行きたいと願う心を表している。
 結句「慕はれぞせし」は、慕わしく思われたことだ、の意で、「れ」は自発を表し、「ぞ」を受けて連体形「し」で結ぶ係り結びとなっている。次歌の二句「慕ふ」に受けられている。

そむく:背を向ける、離れる
したふ:恋い慕う、後を追う
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
別れてはいつ逢ひ見むと思ふらん 限りある世の命ともなし
次の歌
ともともと慕ふ涙の添ふ水は いかなる色に見えてゆくらん