今日見れば玉のうてなもなかりけり
あやめの草のいほりのみして
- 歌の意味
-
今日見ると、玉で飾った立派な御殿もなかったのだなあ。どこもあやめ草で葺いた庵ばかりになって。
- 鑑賞
-
巻第二 夏歌 110
詞書「題しらず」
端午の節句の今日は、どの家の軒にもあやめ草が葺かれ、立派な御殿も粗末な庵のように見えると詠む歌である。貴賤を問わず一様にあやめ草を葺く節句の風景を、御殿と庵の対比によって機知的にとらえている。
初句「今日見れば」は、端午の節句の今日見ると、の意である。前歌の「今日我が宿の」を受け、節句当日の景を詠む。
二句「玉のうてなも」は、玉で飾った美しい御殿も、の意である。
三句「なかりけり」は、なかったのだなあ、の意で、「けり」は気づきの詠嘆を表す。ここで句切れとなり、下の句とは倒置の関係になる。
四句「あやめの草の」は、本巻の第百八首と同じ語句で、あやめ草の一連が続く。
結句「いほりのみして」は、草の庵ばかりになって、の意である。御殿と庵という貴と賤の対比によって、節句の日の町の様子を浮かび上がらせている。
うてな:高く造った立派な建物。御殿
いほり:草木で造った粗末な小屋。庵
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
昨日までよそに思ひしあやめ草 今日我が宿のつまと見るかな
- 次の歌
-
あしひきの山郭公今日とてや あやめの草のねにたてて鳴く