後れずぞ心に乗りてこがるべき
波に求めよ舟見えずとも
- 歌の意味
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後に残されることなく、私はあなたの心に乗って、焦がれながら漕がれて行くはずだ。たとえ舟が見えなくても、波の上に私を探してほしい。
- 鑑賞
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巻第十九 離別歌 1345
詞書「舟にてものへまかりける人につかはしける」
後れずに心に乗って漕がれて行くはずだ、舟が見えなくとも波に私を求めよ、と詠んだ歌である。舟で旅立つ人に、自分は残されずに相手の心に乗って共に行くと言い、「漕がる」に「焦がる」を掛けて、恋い焦がれる思いを伝えている。
詞書によれば、舟でどこかへ旅立つ人に送った歌である。次歌はその返しで、二首は贈答の一組となっている。本巻ではここから、舟で旅立つ人との贈答が二組続いている。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「後れずぞ」は、後に残されることなく、の意で、「ぞ」は強意の係助詞である。
二句「心に乗りて」は、あなたの心に乗って、の意で、舟に乗るさまに重ねている。
三句「こがるべき」の「こがる」は、舟が「漕がる」と、恋い「焦がる」を掛けた掛詞である。初句の「ぞ」を受けて連体形「べき」で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
四句「波に求めよ」は、波の上に探してほしい、の意で、命令形である。
結句「舟見えずとも」は、舟が見えなくても、の意で、「とも」は逆接の仮定を表す。「乗る」「漕ぐ」「波」は「舟」の縁語である。
こがる:舟が「漕がる」意と、恋い「焦がる」意を掛ける
おくる:後に残される、取り残される
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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君が世はつるの郡にあえて来ね 定めなき世の疑ひもなく
- 次の歌
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舟なくは天の川まで求めてむ 漕ぎつつ潮の中に消えずは