おさへつつ我は袖にぞせきとむる
舟越す潮になさじと思へば
- 歌の意味
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押さえ押さえして、私は涙を袖でせき止めている。舟を越すほどの潮にはすまいと思うので。
- 鑑賞
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巻第十九 離別歌 1348
詞書「返し」
押さえながら、私は涙を袖でせき止めている、舟を越す潮にはすまいと思うので、と詠んだ歌である。前歌の、出立前から涙が袖を濡らすという訴えを受け、自分は涙を袖でせき止めて、舟を越えるほどの潮にはしないと、旅の無事を気遣って答えている。
前歌に対する伊勢の返しである。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「おさへつつ」は、押さえ押さえして、の意で、「つつ」は反復を表す。
二句「我は袖にぞ」は、私は袖で、の意で、前歌の二句「袖を」を受けている。「ぞ」は強意の係助詞である。
三句「せきとむる」は、せき止める、の意で、二句の「ぞ」を受けて連体形で結ぶ係り結びとなっている。ここで句切れとなる。
四句「舟越す潮に」は、舟を越すほどの潮に、の意で、涙を潮にたとえている。前歌の四句「舟に」を受けている。
結句「なさじと思へば」は、すまいと思うので、の意で、前歌の結句「と思へば」と同じ形で応じている。
せきとむ:流れをせき止める
- 作者
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伊勢
- 出典
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後撰和歌集
- 前の歌
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かねてより涙ぞ袖をうち濡らす 浮かべる舟に乗らむと思へば
- 次の歌
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忘れじと言に結びて別るれば 逢ひ見むまでは思ひ乱るな