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都にて山の端に見し月なれど
海より出でて海にこそ入れ

歌の意味
都では山の端から出て山の端に入るのを見た月であるが、ここでは海から出て海に入ってゆくことだ。
鑑賞
巻第十九 離別歌 1355

詞書「土佐よりまかり上りける舟の内にて見侍りけるに、山の端ならで月の波の中より出づるやうに見えければ、昔安倍仲麻呂が唐土にて、ふりさけ見ればと言へることを思ひやりて」
 都では山の端に見た月だが、海から出て海に入る、と詠んだ歌である。土佐から都へ上る船旅で、山の端ではなく波間から月が出るのを見て、都と海上との月の違いに旅の遠さを感じている。
 詞書によれば、土佐から都へ上る舟の中で、月が山の端ではなく波の中から出るように見えたので、昔、安倍仲麻呂が唐土で「ふりさけ見れば」と詠んだことを思いやって詠んだ歌である。土佐日記にも、結句を「波にこそ入れ」とするなど語句を少し異にする形で見える。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られ、小倉百人一首には「人はいさ心も知らずふるさとは」の歌が採られている。

 初句「都にて」は、都では、の意である。
 二句「山の端に見し」は、山の稜線に見た、の意で、都では月が山の端から出て山の端に入ることをいう。
 三句「月なれど」は、月であるが、の意で、「ど」は逆接を表す。
 四句「海より出でて」は、海から出て、の意で、二句の「山の端」と対比している。
 結句「海にこそ入れ」は、海に入ってゆく、の意で、「こそ」を受けて已然形「入れ」で結ぶ係り結びとなっている。四句と同じ「海」を重ねている。

やまのは:山の稜線、山と空の境
ふりさく:振り仰いではるかに見る
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
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山里の草葉の露も繁からん みのしろ衣縫はずとも着よ
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水引の白糸延へて織る機は 旅の衣に裁ちや重ねん