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引き植ゑし二葉の松はありながら
君が千歳のなきぞ悲しき

歌の意味
引き抜いて植えた二葉の松は、こうして残っているのに、あなたの千年の寿命がなかったことが悲しい。
鑑賞
巻第二十 慶賀歌 1411

詞書「兼輔朝臣亡くなりてのち、土佐の国よりまかり上りて、かの粟田の家にて」
 引き植えた二葉の松はあるのに、あなたの千年がないのが悲しい、と詠んだ歌である。かつて植えた小松は育って残っているのに、千年の長寿を祝ったその人はもういないと、庇護を受けた主の死を悼んでいる。
 詞書によれば、藤原兼輔が亡くなったのち、作者が土佐の国から都へ上り、兼輔の粟田の家で詠んだ歌である。作者は兼輔の庇護を受けた歌人であった。本巻の第千三百六十九首など慶賀の歌で祝われた「君が千歳」が、ここでは失われたものとして詠まれ、慶賀と哀傷が対照をなしている。
 作者の「つらゆき」は紀貫之である。紀望行の子で、古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られ、小倉百人一首には「人はいさ心も知らずふるさとは」の歌が採られている。

 初句「引き植ゑし」は、根から引き抜いて移し植えた、の意である。
 二句「二葉の松は」は、芽生えたばかりの小さな松は、の意で、長寿を象徴する松である。
 三句「ありながら」は、残っているのに、の意で、「ながら」は逆接を表す。
 四句「君が千歳の」は、あなたの千年の寿命の、の意で、本巻の第千三百六十九首の四句と同じ語である。
 結句「なきぞ悲しき」は、ないことが悲しい、の意で、「ぞ」を受けて連体形「悲しき」で結ぶ係り結びとなっている。

ひきうう:根から引き抜いて移し植える
ふたば:芽を出したばかりの二枚の葉、幼い木
作者
紀貫之
出典
後撰和歌集
前の歌
きくにだに露けかるらむ人の世を 目に見し袖を思ひやらなむ
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君まさで年は経ぬれどふるさとに 尽きせぬものは涙なりけり