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君まさで年は経ぬれどふるさとに
尽きせぬものは涙なりけり

歌の意味
あなたがいらっしゃらなくなって年は経ったけれども、この古い家で尽きないものは涙なのであった。
鑑賞
巻第二十 慶賀歌 1412

詞書「そのついでに、かしこなる人」
 あなたがいなくなって年は経ったが、古い家で尽きないものは涙だった、と詠んだ歌である。主の兼輔が亡くなって年月が経っても、その家に残る者の涙は尽きることがないと、変わらぬ悲しみを詠んでいる。
 詞書によれば、前歌と同じ折に、粟田の家にいた人が詠んだ歌である。
 作者は「よみ人しらず」で、詠み手の名は伝わらない。

 初句「君まさで」は、あなたがいらっしゃらなくなって、の意である。
 二句「年は経ぬれど」は、年は経ったけれども、の意で、「ど」は逆接を表す。
 三句「ふるさとに」は、古くからなじんだこの家に、の意である。
 四句「尽きせぬものは」は、尽きないものは、の意で、本巻の第千三百九十五首の結句「尽きせざりける」と同じく、尽きない涙を詠んでいる。
 結句「涙なりけり」は、涙なのであった、の意で、「けり」は気づきを表す。

ます:いらっしゃる
ふるさと:古くからなじんだ家
作者
よみ人しらず
出典
後撰和歌集
前の歌
引き植ゑし二葉の松はありながら 君が千歳のなきぞ悲しき
次の歌
過ぎにける人を秋しも問ふからに 袖は紅葉の色にこそなれ