なく声に添ひて涙はのぼらねど
雲の上より雨と降るらむ
- 歌の意味
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鳴く声とともに涙が空へのぼるわけではないのに、どうして雲の上から雨となって降るのだろうか。
- 鑑賞
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巻第二十 慶賀歌 1423
詞書「一番ひ侍りける鶴の一つが亡くなりにければ、とまれるがいたく鳴き侍りければ、雨の降り侍りけるに」
鳴く声に添って涙はのぼらないのに、雲の上から雨と降るのだろうか、と詠んだ歌である。つがいの鶴の一羽が死に、残った鶴が悲しげに鳴く日に降る雨を、鶴の涙が雲の上から降ってくるかのように見て、残された者の悲しみを思いやっている。
詞書によれば、つがいで飼っていた鶴の一羽が死に、残った鶴がひどく鳴いていた時、雨が降っていたので詠んだ歌である。本巻の第千四百首でも、相手を失ってひとり鳴くおしどりが詠まれている。
作者の伊勢は、伊勢守藤原継蔭の娘で、宇多天皇の女御藤原温子に仕えた。宇多天皇の寵を受け、のちに敦慶親王との間に中務を生んだ。三十六歌仙の一人で、小倉百人一首には「難波潟短き葦のふしの間も」の歌が採られている。
初句「なく声に」の「なく」は、鶴が「鳴く」と、悲しんで「泣く」を掛けた掛詞である。
二句「添ひて涙は」は、声に添って涙は、の意である。
三句「のぼらねど」は、のぼらないけれども、の意で、「ど」は逆接を表す。鶴は空高く声を響かせる鳥とされる。
四句「雲の上より」は、雲の上から、の意である。
結句「雨と降るらむ」は、雨となって降るのだろうか、の意で、「らむ」は原因の推量を表す。本巻の第千四百十四首も、涙と雨とを重ねて詠んでいる。
なく:鶴が「鳴く」意と、悲しんで「泣く」意を掛ける
ひとつがひ:雌雄の一組
- 作者
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伊勢
- 出典
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かけてだに我が身の上と思ひきや 来む年春の花を見じとは
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なき人のともにし帰る年ならば 暮れゆく今日は嬉しからまし