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春日野に多くの年はつみつれど
老いせぬものは若菜なりけり

歌の意味
春日野で若菜を摘みながら多くの年を積み重ねてきたが、老いることのないものは若菜であった。
鑑賞
巻第一 春歌 20

詞書「若菜を御覧じて」
 春日野で長い年月にわたり若菜を摘み、自らは年を重ねてきたけれども、若菜だけは毎年変わらず若いままだと詠む。年を積むことと若菜を摘むこととを重ね、老いと若さを対比させた御製である。詞書によれば、若菜を御覧になって詠まれた歌である。
 作者の「円融院御製」は円融天皇の御製である。円融天皇は村上天皇の皇子で、第六十四代の天皇である。

 初句「春日野に」は、奈良の春日野で、若菜摘みの名所として知られる。本巻の第三首の春日の山と同じく、春日の地を詠む。
 二句「多くの年は」は、長い年月を表す。
 三句「つみつれど」は、年を「積む」意と若菜を「摘む」意を掛けた掛詞である。「つれ」は完了の助動詞「つ」の已然形、「ど」は逆接の接続助詞である。
 四句「老いせぬものは」は、年を積んだ自分と対照して、老いることのないものを示す。
 結句「若菜なりけり」は、「若菜」の「若」が四句の「老い」と対をなし、「けり」は気づきの詠嘆を表す。本巻の第二十六首も同じく「若菜なりけり」で結ぶ。

つむ:年を積み重ねる意と、若菜を摘む意を掛ける
かすがの:奈良市の春日山のふもとに広がる野
作者
円融天皇
出典
拾遺和歌集
前の歌
野辺見れば若菜摘みけりむべしこそ 垣根の草も春めきにけれ
次の歌
春の野にあさる雉の妻恋ひに おのがありかを人に知れつつ