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匂ひをば風に添ふとも梅の花
色さへあやなあだに散らすな

歌の意味
香りは風に添えて送ってもよいが、梅の花よ、色までもわけもなく、むなしく散らさないでくれ。
鑑賞
巻第一 春歌 31

詞書「題しらず」
 梅の香りは風にのせて運ばれてもかまわないが、花の色まではむやみに散らさないでほしいと願う歌である。香と色を分けて、香は風に任せても色は惜しむという心を示している。
 作者の「大中臣能宣」は伊勢神宮の祭主を務めた家の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進に関わった。三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「匂ひをば」は、「匂ひ」が香りの意で、「をば」は対象を強く示す。
 二句「風に添ふとも」は、風に添えて運ばせてもよいが、の意である。前歌が風に散る花の香を喜んだのを受け、香は風に任せるとする。
 三句「梅の花」は、呼びかけの対象として置かれる。
 四句「色さへあやな」は、「さへ」が添加を表し、色までも、の意で、「あやな」はわけもなく、むやみに、の意である。
 結句「あだに散らすな」は、「あだに」がはかなく、むなしくの意で、「な」は禁止の終助詞である。

にほひ:香り。また、色の美しさ
作者
大中臣能宣
出典
拾遺和歌集
前の歌
吹く風を何いとひけん梅の花 散りくる時ぞ香はまさりける
次の歌
ともすれば風のよるにぞ青柳の 糸はなかなか乱れそめける