咲けば散る咲かねば恋し山桜
思ひ絶えせぬ花の上かな
- 歌の意味
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咲けば散り、咲かなければ恋しい山桜よ。物思いの絶えることのない花の身の上であることだ。
- 鑑賞
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巻第一 春歌 36
詞書「子にまかり後れて侍りける頃、東山に籠りて」
山桜は咲けば散ることが心配になり、咲かなければ待ち遠しく恋しいと、どちらにしても思いの絶えない花のありさまを詠む。詞書によれば、子に先立たれたころ東山にこもって詠んだ歌であり、花に寄せる尽きぬ思いには、亡き子を思う母の嘆きが重ねられていると読める。
作者の「中務」は、宇多天皇の皇子敦慶親王と歌人伊勢との間に生まれた娘である。三十六歌仙の一人に数えられる。
初句「咲けば散る」は、咲けばすぐに散る桜のはかなさをいう。
二句「咲かねば恋し」は、初句と対句をなし、咲かなければ恋しいという逆の嘆きを示す。
三句「山桜」は、ここから本巻の桜の歌が本格的に始まる語で、三句切れである。
四句「思ひ絶えせぬ」は、思いが絶えることのない意で、子を失った悲しみがやまないことにも通じる。
結句「花の上かな」は、「上」が身の上、ことの意で、「かな」は詠嘆の終助詞である。
うへ:身の上。…に関すること
- 作者
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中務
- 出典
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拾遺和歌集
- 前の歌
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花見には群れて行けども青柳の 糸のもとにはくる人もなし
- 次の歌
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吉野山絶えず霞のたなびくは 人に知られぬ花や咲くらん