見れど飽かぬ花の盛りに帰る雁
なほ故里の春や恋しき
- 歌の意味
-
見ても見飽きることのない花盛りの時に帰っていく雁よ。それでもやはり故郷の春が恋しいのか。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 55
詞書「題しらず」
見飽きることのない花盛りの時に北へ帰っていく雁に、それでもやはり故郷の春の方が恋しいのかと問いかける歌である。花を見捨てて去る雁を不思議に思う心に、花を愛する作者の思いがにじむ。
初句「見れど飽かぬ」は、見ても見飽きない、の意で、字余りとなる。
二句「花の盛りに」は、花盛りの時に、の意である。
三句「帰る雁」は、春に北へ帰っていく雁で、三句切れである。次歌も帰る雁を詠み、二首が並べられている。
四句「なほ故里の」は、雁の故郷である北の国をいう。本巻の第四十八首、第四十九首の「故里」が人の住んだ古い里であるのに対し、ここでは雁の故郷である。
結句「春や恋しき」は、「や」の係り結びで連体形「恋しき」で結ぶ。
かへるかり:春に北方へ帰っていく雁
- 作者
-
よみ人しらず
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
身にかへてあやなく花を惜しむかな 生けらば後の春もこそあれ
- 次の歌
-
故里の霞飛び分け行く雁は 旅の空にや春を暮らさむ