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散りそむる花を見捨てて帰らめや
おぼつかなしと妹は待つとも

歌の意味
散り始めた花を見捨てて帰ることなどできようか。気がかりだと妻が待っているとしても。
鑑賞
巻第一 春歌 59

詞書「屏風に」
 散り始めた花を見捨てて帰ることなどできようか、たとえ妻が帰りを待ちわびていても、と花への執着を詠む。家で待つ妻よりも花を選ぶというやや誇張した表現に、花を惜しむ心の強さが表れている。詞書によれば、屏風に添えた歌である。
 作者の「よしのふ」は大中臣能宣である。伊勢神宮の祭主を務めた家の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進に関わった。三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「散りそむる」は、散り始める意である。
 二句「花を見捨てて」は、花を後に残して見捨てる意である。
 三句「帰らめや」は、「めや」が反語を表し、帰ることがあろうか、いや帰らない、の意で、三句切れである。
 四句「おぼつかなしと」は、気がかりで待ち遠しいと、の意である。
 結句「妹は待つとも」は、「とも」が逆接の仮定を表し、倒置によって上の句の決意を強める。本巻の第二十七首と同じく、花と妻とを取り合わせる。

いも:男性が妻や恋人を親しんで呼ぶ語
みすつ:見捨てる。後に残して去る
作者
大中臣能宣
出典
拾遺和歌集
前の歌
告げやらん間にも散りなば桜花 いつはり人に我やなりなん
次の歌
見も果てて行くと思へば散る花に つけて心の空になるかな