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春深み井手の川波立ち返り
見てこそ行かめ山吹の花

歌の意味
春が深まったので、井手の川波が寄せては返すように、繰り返し立ち戻って見てから行こう、山吹の花を。
鑑賞
巻第一 春歌 68

詞書「天暦御時歌合に」
 春も深まった井手の里で、川波が繰り返し寄せ返すように、何度も振り返って山吹の花を見てから行こうと詠む。井手は山吹の名所として知られ、川波と山吹の取り合わせが美しい。詞書によれば、村上天皇の天暦の御代の歌合に出された歌である。
 作者の「源したかふ」は源順である。嵯峨源氏の出で、梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進に関わり、和名類聚抄を編んだ。三十六歌仙の一人に数えられる。

 初句「春深み」は、「み」が理由を表す接尾語で、春が深いので、の意である。本巻の第六十三首の「春深く」を受けて晩春の景へ進む。
 二句「井手の川波」は、山城国の歌枕である井手を流れる玉川の波で、三句の「立ち返り」を導く序詞をなす。
 三句「立ち返り」は、波が立っては返る意と、何度も引き返す意を重ねる。
 四句「見てこそ行かめ」は、「こそ」と已然形「め」の係り結びで、見てから行こうという意志を強める。
 結句「山吹の花」は体言止めで、ここから山吹の歌が続く。

ゐで:山城国の歌枕。現在の京都府綴喜郡井手町。山吹と蛙の名所
たちかへる:波が寄せては返す。繰り返す
作者
源順
出典
拾遺和歌集
前の歌
岩間をも分けくる滝の水をいかで 散り積む花のせきとどむらん
次の歌
山吹の花の盛りに井手に来て この里人になりぬべきかな