物も言はで眺めてぞ経る山吹の
花に心ぞうつろひぬらん
- 歌の意味
-
何も言わずに物思いにふけって日を過ごしている。山吹の花に心が移ってしまったのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 70
詞書「屏風に」
何も言わずにぼんやりと眺めて日を過ごしているのは、山吹の花に心が移ってしまったからだろうかと詠む。山吹の黄色を梔子色ということから「口無し」を連想させ、物を言わないことと山吹とを結びつけている。詞書によれば、屏風に添えた歌である。
作者の「もとすけ」は清原元輔である。清原深養父の孫で、清少納言の父である。梨壺の五人の一人として後撰和歌集の撰進に関わり、三十六歌仙の一人に数えられる。
初句「物も言はで」は、何も言わずに、の意で、「で」は打消の接続助詞である。山吹の色を梔子色ということから「口無し」を連想させる。
二句「眺めてぞ経る」は、「眺む」が物思いにふけってぼんやり見る意で、「ぞ」の係り結びで連体形「経る」で結び、二句切れである。
三句「山吹の」は、本巻の第六十八首、第六十九首に続く山吹の歌である。
四句「花に心ぞ」は、「ぞ」の係助詞が置かれ、結句の「らん」で結ぶ。
結句「うつろひぬらん」は、心が移ってしまったのだろうか、の意で、花の色があせる意の「うつろふ」とも響き合う。
ながむ:物思いにふけってぼんやりと見る
ふ:時を過ごす。経る
うつろふ:心が移る。また、花の色があせる
- 作者
-
清原元輔
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
山吹の花の盛りに井手に来て この里人になりぬべきかな
- 次の歌
-
沢水にかはづ鳴くなり山吹の うつろふ影や底に見ゆらん