風吹けば方も定めず散る花を
いづ方へ行く春とかは見む
- 歌の意味
-
風が吹くと方角も定めずに散る花を見て、どちらへ去って行く春と見たらよいのだろうか。
- 鑑賞
-
巻第一 春歌 76
詞書「延喜御時春宮御屏風に」
風が吹くたびに方角も定めずに散る花を見て、春はどちらの方へ去っていくのか見当もつかないと詠む。去りゆく春の行方を、四方に散る花に託して問いかける歌である。詞書によれば、延喜の御代の春宮の御屏風に添えた歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心となり、仮名序を書いた。土佐日記の作者としても知られ、三十六歌仙の一人に数えられる。
初句「風吹けば」は、風が吹くと、の意である。
二句「方も定めず」は、方角も定めずに、の意である。
三句「散る花を」は、四方へ散る花を示す。
四句「いづ方へ行く」は、どちらへ行く、の意で、二句の「方」と呼応する。
結句「春とかは見む」は、「かは」が疑問を表し、どちらへ行く春と見たらよいのか、の意である。本巻の終わりに向けて、ここから去りゆく春を詠む歌が続く。
いづかた:どちら。どの方向
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
年のうちはみな春ながら暮れななん 花見てだにも憂き世過ぐさん
- 次の歌
-
花もみな散りぬる宿は行く春の 故里とこそなりぬべらなれ