神祭る宿の卯の花白妙の
みてぐらかとぞあやまたれける
- 歌の意味
-
神を祭る家に咲く卯の花は、真っ白な御幣かと見誤られることだ。
- 鑑賞
-
巻第二 夏歌 92
詞書は前の歌に続き「延喜御時月次御屏風に」
神を祭る家に咲く卯の花を、神前に供える白い幣と見誤ったと詠む歌である。卯の花の白さを神事の白い幣に見立て、屏風に描かれた神祭りの場面にふさわしい清らかさを添えている。詞書によれば、前歌と同じく醍醐天皇の延喜の御代に、月ごとの行事を描いた屏風に添えた歌である。
作者の「つらゆき」は紀貫之である。古今和歌集の撰者の中心人物で、仮名序を執筆し、土佐日記を著した。三十六歌仙に数えられる。
初句「神祭る」は、前歌の初句と同じ語で、同じ屏風の卯月の神事の場面を受ける。
二句「宿の卯の花」は、神を祭る家に咲く卯の花をいう。前歌が卯月という時を示したのに対し、本歌は宿という場を示す。
三句「白妙の」は、真っ白な、の意で、四句の「みてぐら」の白さを強める。
四句「みてぐらかとぞ」は、神に供える幣かと、の意である。前歌が杵でついた米の白さに見立てたのに続き、本歌は同じ神事の縁で幣に見立てており、二首が神祭りの場面で対をなす。
結句「あやまたれける」は、見誤られることだ、の意で、「れ」は自発の助動詞「る」の連用形であり、「ぞ」の係り結びにより連体形の「ける」で結ぶ。
しろたへ:白い布。転じて白いこと
みてぐら:神に供える幣帛。御幣
あやまつ:誤る。見間違える
- 作者
-
紀貫之
- 出典
-
拾遺和歌集
- 前の歌
-
神祭る卯月に咲ける卯の花は 白くもきねがしらげたるかな
- 次の歌
-
山がつの垣根に咲ける卯の花は 誰が白妙の衣かけしぞ